カーボンニュートラル
紙とカーボンニュートラル



持続可能な社会の実現に向け、地球温暖化問題は解決すべき喫緊の課題となっています。その温暖化の原因の1つである温室効果ガスの削減に向けて、今世界中で「カーボンニュートラル」の取り組みが推進されています。
カーボンニュートラルの意義やカーボンオフセットとの違い、そして新井紙材の取り扱う「紙」とカーボンニュートラルの関係性を解説します。
カーボンニュートラルとは
環境省によると、カーボンニュートラルは以下のように定義されています。
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
※ここでの温室効果ガスの「排出量」「吸収量」とは、いずれも人為的なものを指します。引用元:環境省脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」
二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにすることを目指す「脱炭素」に対し、カーボンニュートラルが目指すのは、排出せざるを得ない一定量の温室効果ガスを踏まえた上で、同じ量を吸収・除去することで差し引きゼロとすることです。そのためカーボンニュートラルに向けては「温室効果ガスの排出の抑制」と「吸収・除去」の両面からアプローチする必要があります。
カーボンニュートラルが求められる
歴史的背景
カーボンニュートラルが求められる背景には、地球温暖化及びそれに起因する気候変動問題があります。
17世紀後半のイギリスの産業革命から顕在化してきた環境問題は、地球規模の気候変動問題を伴って現代まで続いています。特に近年、地球温暖化に伴う気候変動によって、猛暑や干ばつ、洪水などさまざまな気象災害が世界中で発生しています。こうした災害が頻発することで生態系の変化や産業・経済活動への影響も懸念されます。この地球温暖化の原因の1つされているのが、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスです。

2015年に採択されたパリ協定では、以下2点が世界共通の長期目標として合意されました
-
世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに(2℃目標)、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)
-
今世紀後半(2050年以降)に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
この実現に向けて、日本でも2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする」というカーボンニュートラルを目指す宣言がなされました。日本以外でも、現在世界120か国以上で2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進められています。
科学的知見に基づく気候変動の報告書を作成している「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の資料によると、温暖化対策をしない場合2100年にかけて世界平均気温が3.3℃から最大5.7℃の気温上昇というシナリオが立てられています。一方で最大限の対策を行った場合は、気温上昇は1℃前後に抑えられると予想されています。つまりカーボンニュートラルは、持続可能な社会の実現のために不可欠な取り組みなのです。
カーボンオフセットとの違い
カーボンニュートラルと混同されがちなのが、「カーボンオフセット」です。カーボンオフセットとは、温室効果ガスの排出を抑制する努力をしつつ、排出した分は温室効果ガス削減活動に投資することなどによって埋め合わせをする(=オフセット)という考え方を指します。この投資は環境省、経済産業省、農林水産省によって運営される「J-クレジット制度」として仕組み化されています。
カーボンニュートラルもカーボンオフセットも、温室効果ガスの排出抑制を目指す点は同じです。カーボンニュートラルが「温室効果ガスの排出量を±ゼロにする」という目標そのものであるのに対し、カーボンオフセットはその目標実現に向けた手段の1つであると言えるでしょう。
紙とカーボンニュートラル
国の方針に基づき、企業でもカーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組みが進められています。
新井紙材では古紙リサイクルの会社として「紙」を取り扱っています。その紙は、素材自体がカーボンニュートラルであるとされています。
紙の原料である木は成長過程で大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、吸収した二酸化炭素は、紙などに形を変えてもそのまま炭素(C)として固定され続けます。紙を燃やすと、その固定された炭素と酸素が結びつき二酸化炭素が排出されますが、もともと吸収した分の二酸化炭素が再び排出されたということになり、新たなCO2の排出は生まれません。これが「紙がカーボンニュートラルである」といえる理由です。
また森林が二酸化炭素を吸収する役割を果たすことから、「紙の製造=森林伐採=脱炭素の阻害要因」と捉えられることも少なくありません。しかし紙の原料となる木材の多くは製紙メーカーによって計画的に植林されたものを使用しています。さらにいうと、国内で製造される紙の原料は64%が古紙とされています。植林した木材と、使用後の製品を循環的に利用する紙材は、まさにサステナビリティな素材ということができるのです。